神宮司信也 様 (詩想舎)
日本電子出版協会(JEPA)の広報委員会副委員長で、またひとり出版@詩想舎を運営している神宮司信也と申します。
出身大学が京都大学ということで勝手に私淑させていただいておりました。とりりわけ、2007年に国立国会図書館長に就任されてからは、各種ご講演の「追っかけ」をやっており、ご薫陶を得られる機会も増えました。
「政府や国会議員で、学問に本当に耳を傾けようとする人が日本では少なすぎる。」といったコメントや、専門知の流通に関する、日本語圏の状況に対する危機感、特にGoogleBooks訴訟とその顛末(フェアユースからのGoole勝訴)を受けての「長尾構想」など、よく議論させていただきました。
先生の情報工学の先駆者としてのご業績はひろく知られているところです。しかし「長尾構想」の背景にあった先生の危機感、問題意識は残念ながら、出版や図書館の世界の人々の中でなお共有されていない、歯がゆさが残ります。
(御逝去を機に、先生の危機感、問題意識を改めてブログ記事にまとめました。
●本の知識の組織化と長尾構想)
フランスの哲学者にして記号学者のロラン・バルトが、
「テクストとは多次元の空間であって、そこではさまざまなエクリチュールが、結びつき、異議をとなえあい、そのどれもが起源となることはない。テクストとは、無数にある文化の中心からやって来た引用の織物である。」(ロラン・バルト「作者の死」『物語の構造分析』)
といっています。
長尾先生は、この「引用の織物」である本のネットワークを可視化し、誰でもがアクセできる世界を夢見ておられました。日本電子出版協会(JEPA)で行っていただいたご講演、「長尾 真 前国会図書館長に聞く『電子図書館と電子出版の今後』(2015年3月3日)」では、その技術的可能性・選択肢についての言及があり、その中で「マイクロコンテンツ化1」による効能に触れられていました。さっそく、弊社詩想舎のレーベル「iCardbook」についてご報告し、「マイクロコンテンツ化」による専門書の多次元検索の可能性について激励をいただきました。懐かしい思い出です。
また日本電子出版協会(JEPA)では長尾構想のアイデア、精神の延長線上に、義務教育課程での具体化を展望できる提言を現在準備中です。
先生のアイデア、精神はこうして今後も日本社会を駆動していきます。どうかその行く末をお見守りください。
文化勲章のニュースがつい先日のようで、一層のご活躍を期待していた矢先のご訃報でした。ご冥福を心よりお祈りいたします。
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「字句、記事、目次(章、節、項など)、頁など種々の粒度(マイクロコンテンツ)を単位として、検索とともに種々の出版物間での相互参照ができる機能」 ↩